The Power of E

直動アクチュエータにおける精密位置決め制御においてよく使われるシステムとして、電動ボールねじの機構や油圧サーボ弁のシステムが挙げられます。しかしながら、位置制御を行いながら高推力を発生させる用途においては電動ボールねじでは困難となります。

また、代替として油圧サーボ弁システムを採用した場合には、コンパクト性と省エネ性が犠牲となります。

弊社が開発した電動油圧アクチュエータ「e-Zero」は、電動ボールねじ及び油圧サーボ弁システム双方のデメリットを克服し、電動の省エネ性とコンパクト性を維持しながら高推力と精密位置決めを両立した新時代のアクチュエータです。

① 電動ボールねじ式直動アクチュエータによる位置決め制御

アクチュエータによる直動位置決め行う場合、リニアモータによる直接駆動や、サーボモータ・ステッピングモータと送りねじを使った直動機構などがありますが、高精度位置決めをする場合に一般的によく使われる機構は、サーボモータとボールねじを組み合わせたアクチュエータとなります。

電動ボールねじ式アクチュエータは、優れた位置決め性能を誇っており、ほぼ全ての市販品が繰り返し位置決め精度±5μm以内を保証しています。

しかしながら、高精度位置決めに加えて高推力も出したい用途においては一筋縄にはいきません。電動の機械式システムで大きな力を出すためには、減速機や軸、歯車機構が必要となり大仰な装置となってしまいます。サーボモーターも高動力の製品を選定しなければならず、サイズ的にもコスト的にも大幅にアップしてしまいます。

② 油圧サーボ弁を用いた位置決め制御

位置決め制御に加え、電動シリンダでは苦手な高推力を出す用途で元来使われてきた方式が、油圧サーボ弁を使って油圧シリンダを制御する方法です。

油圧シリンダを往復させるには方向切換え弁を使用しますが、通常ON/OFF制御しか出来ない方向切換弁のスプールを、サーボ制御により無段階に制御することによって方向と同時に流量も高速に制御出来るようにしたバルブがサーボ弁です。

サーボ弁は非常に優れた制御性能を発揮しますが、エネルギー効率の面で大きな課題を抱えております。サーボ弁はスプールの開度を微調整して作動油の方向、流量、圧力を制御しますが、これはシリンダ制御用の4ポート切換え弁のすべてのポート(P・T・A・B)を絞り弁により高速制御を行っていることと同義となります。油圧システムは、絞り弁を通過する際に流量と圧力を熱として捨ててしまいますが、サーボ弁は常時絞り制御を行う構造のためエネルギー効率は非常に悪いです。サーボ弁を通過した作動油の圧力は入り口の半分以下に降下し、同様に流量も半分以下となってしまうため、油圧シリンダが要求する2~3倍の圧力と流量をもつ超大型の油圧ユニットが必要となります。

このように、油圧サーボ弁システムを使用すると精密位置決め制御と高出力を両立することが可能ですが、装置の大型化と環境性の悪さについては大きな課題を抱えております。

③ e-Zeroを使用した位置決め制御

e-Zeroは、電動シリンダと同等の位置決め制御性能と省エネ性を維持しながら、油圧シリンダと同等の高推力を発揮することが出来る次世代型のアクチュエータとなります。

e-ZeroはDDVC(Direct Drive Volume Control)と呼ばれる油圧制御方式を採用し、ACサーボモータにより双方向回転油圧ポンプを直接制御して高精度に圧力と流量を制御します。制御精度は電動サーボシリンダや油圧サーボ弁システムと同様(荷重制御精度±1%F.S. 繰り返し位置決め精度5μm)です。

シリンダの往復はサーボモーターの正逆回転で制御し、速度はモーターの回転数で制御します。位置の制御はシリンダに内蔵した磁歪式のストロークセンサの信号を読み取り、目標位置との差分に対してポンプの吐出を制御するクローズ制御を行っております。

このように、元来は油圧バルブで行っていたシリンダの動作について、e-Zeroはサーボモータの制御によって実現しております。そのため、流量や圧力の損失の原因であるバルブ類は必要最低限しか存在しておりません。結果として、e-Zeroのエネルギー効率は非常に高く、ほぼ100%の動力効率を使用でき、無駄なエネルギーを消費しません。

④ まとめ

精密位置決め制御を行う直動アクチュエータとして電動シリンダが一般的ではありますが、高出力を両立させる用途においては油圧システムを検討する必要があります。

e-Zeroは、電動シリンダと同等の位置決め精度と、油圧シリンダの高推力を併せ持っており、装置設計の幅を大きく広げる選択肢となるアイテムなのです。


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